私の過去問を使った勉強法です。
放射線取扱主任者試験で覚えることは、
結局のところ、過去物を解いていけば、
自然と身に付きます。
繰り返し過去問を解くことを優先させてしまった方が良いです。
正答のみをピックアップしたため、
これをさらっと読んだうえで問題を解いてみてください。
間違っていたらすみません。
第1種放射線取扱主任者試験1,2
2021実務
2021問1 GM管式サーベイメータに関する次のI~Ⅲの文章の□の部分について、解答群の選択肢のうち最も適切な答えを1つだけ選べ。
I GM計数管は、電離箱や比例計数管と同様に放射線の電離作用を利用したガス入り検出器であり、一般的に放射線のエネルギー情報は得られないが、放射線の数を簡便に計測できる。図1に示すように、最初に入射した荷電粒子によりガイガ-放電が起こり、大きなパルス信号が発生する。この放電により陽極線近傍に生成した陽イオンが陽極線全体を覆って電界を弱めるため、このときに次の荷電粒子が入射しても信号のパルス波高が計測可能レベルに達しない。その後、陽イオンが陰極に向かって移動するとともに電界も徐々に回復し、陽イオンが陰極に到達すると本来のパルス波高に戻る。図1に示すように、一定の時間が経過するとパルス波高が計測可能レベルを超える。この時間をGM計数管の(A 1 分解時間)という。通常使用するGM計数管の( A 1 分解時間)は、100µs程度と比較的長いため、パルス計数率が増加すると数え落とし補正が必要となる。例えば、( A 1 分解時間)が100µsで計数率が1,000 cpsのとき、数え落とし補正後の計数率は、( ア 5 1,100 )cpsとなる。
表面汚染測定に用いる円筒端窓型のGM管式サーベイメータでは、β線測定用の入射窓の材料として( B 5 マイカ)を用い、その厚さは2~3mg・cm-2程度である。この窓の厚さは、最大エネルギーが数十keVであるβ線の最大飛程に相当しているので、β線の最大エネルギーが0.019MeVの( C 1 3H)は測定できない。一方、β線の最大エネルギーが0.157MeVの( D 2 14C)は測定可能な限界に近く、最大エネルギーがより大きい36Cl、131Iおよび32Pなどの核種が測定対象となる。
Ⅱ β線の表面汚染検査に用いる測定器の校正では、測定器の入射窓の面積より大きい面線源を用い、面間の標準的な距離を5mmとする。表面汚染の測定では、GM管式サーベイメータで得られる正味の計数率m[s-1]から表面汚染密度R[Bq・cm-2]を次の式 (1) に従って計算する。
R= m/Wε1εs
ただし、(1)
W :GM計数管のβ粒子の入射窓面積[cm2]
ε1: β粒子に対する機器効率 (線源からのβ粒子表面放出率に対する計数率の比)
εs:β粒子に対する線源効率 (線源のβ粒子生成率に対する表面放出率の比)
また、1壊変当たりに生成するβ粒子の数を1とする。標準面線源によるサーベイメータの校正により、機器効率εiを次の式(2)から計算する。
εi=n/Esc W (2)
ただし、
Ⅱ : GM管式サーベイメータの標準面線源に対する正味の計数率[s-1]
Esc:標準面線源の単位面積当たりのβ粒子表面放出率[Cm-2・s-1]
とする。
GM管式サーベイメータの機器効率1を決定するために、β粒子表面放出率が600±30 s-1である36Cl標準面線源による校正を行い、正味の計数率として36.0±1.2s-1が得られた。標準面線源の面積が150 cm2で、測定器の入射窓面積が20 cm2のとき、機器効率εiは、0.45±( イ 3 0.03)となる。
この校正されたGM管式サーベイメータで、36Clで汚染した床面を校正と同じ条件で測定したとき、正味の計数率として480cpmが得られた。線源効率を0.4とすると、表面汚染密度Rは、( ウ 2 2.2)Bq・cm-2となる。
Ⅲ 図2に標準面線源を用いてGM管式サーベイメータを校正するときの概念図を示す。GM計数管の入射窓の面積より大きい面線源を用い、その面間隔を近づけて平行に配置する。標準面線源の校正証明書から線源効率εsが決まり、標準面線源によるサーベイメータの校正によりその機器効率εi が求まる。図2中のq1~q6は、線源から生成される全β粒子を6種類の異なる相互作用のタイプに分類したときの各β線生成率[s-1]を示す。また各タイプの β 粒子の動きを簡略化した1つの線で表示している。以下に6種類のタイプの概要を示す。
タイプ1:計数管の入射窓に直接入射するβ粒子で、生成率はq1
タイプ2:バッキング材等での後方散乱を経て入射窓に入射するβ粒子で、生成率はq2
タイプ3:面線源から計数管側の立体角2π方向に放出されるが、空気の吸収によって計数管の入射窓まで到達しないβ粒子で、生成率はq3
タイプ4:面線源から計数管側の立体角2π方向に放出されるが、自己吸収で線源から放出されないβ粒子で、生成率はq4
タイプ5:面線源から計数管側の立体角2π方向に放出されるが、幾何学的条件から計数管の入射窓に入射しないβ粒子で、生成率はq5
タイプ6:計数管と反対側の立体角2π方向に向かって放出されるすべてのβ粒子で、タイプ2以外の後方散乱β粒子を含み、生成率はq6
1壊変当たり 1個のβ粒子が生成されるとき、面線源の放射能A[Bq]は、q1+q2+q3+q4+q5+q6 と表せる。図2より、面線源から計数管側へ放出されるβ粒子の表面放出率[s-1]は、q1+q2+q3+q5 と表せるので、線源効率εsは、(1)式の定義より(E 5 q1+q2+q3+q5/A )となる。また、GM管式サーベイメータの正味の計数率をn[s-1]とすると、機器効率εiは、(F 8 n/q1+q2+q3+q5)となる。以上の結果より、機器効率と線源効率の積(εi×εs)は、( G 1 n/A )と表すことができる。
2021問2 次の文章の□の部分について、解答群の選択肢のうち最も適切な答えを 1つだけ選べ。
放射線業務従事者の外部被ばく線量を測定するため、個人線量計が用いられる。代表的な個人線量計には、( A 3 銀活性リン酸塩)ガラスを用いた蛍光ガラス線量計 (RPLD)、( B 2 酸化マグネシウム )を用いた光刺激ルミネセンス線量計(OSLD)、フッ化リチウムなどを用いた熱ルミネセンス線量計(TLD)などがある。これらは、積算型の線量計であり、(C 4 パッシブ)線量計と呼ばれる。RPLDとOSLDは、素子間のばらつきが小さい、( D 5 フェーディング)がほとんどないといった利点を有し、( ア 2 10)µSvから10 Svの線量範囲が測定可能である。リアルタイムに線量を表示可能な線量計には、半導体検出器を用いた線量計がある。半導体検出器は、携帯電話の電波等により誤動作を起こす可能性がある。
RPLDの( A 3 銀活性リン酸塩)ガラスに放射線が照射されると、生成した電子及び正孔が捕獲され蛍光中心が作られる。そこに( E 11 紫外線)を照射するとオレンジ色の蛍光を発する。OSLDでは、放射線照射により電子が( F 2 価電子帯)から( G 1 伝導帯)に移動し、一部の電子は格子欠損や不純物に捕獲され、準安定状態となる。これを外部からレーザ-光などの緑色光で刺激すると電子が離れて正孔と結合し、紫色の蛍光を発する。一方、TLDでは、捕獲された電子が熱により( G 1 伝導帯)に移動し、正孔と結合して可視光域の蛍光を発する。これらの蛍光を計測することにより、放射線の線量が評価できる。
X・γ線用個人線量計の校正を、標準場における置換法によって行う場合を考える。( H 5 空気カーマ)から線量当量への変換係数を1.20 Sv・Gy-1、標準測定器の校正定数を1.10、標準測定器の測定値(指示値に空気密度の違いを補正する係数を乗じた値)を5.2mGy、被校正線量計の測定値を5.1mSvとする。この場合、被校正線量計の校正定数は( イ 4 1.35)と求まる。
第1種放射線取扱主任者試験3,4
2021問3 次の文章の□の部分について、解答群の選択肢のうち最も適切な答えを1つだけ選べ。
非密封の137Csを使用する際には、核的性質や化学的性質を理解しておく こ とが必要である。
137Csは半減期( ア 2 30.1)年でβ–壊変して、その94.4%は137mBaになり、残りの5.6%は直接安定な137Baの基底状態になる。137mBaは半減期2.55分で( A 1 核異性体転移)により137Baになる。この際、主にγ線(( イ 5 662)keV) を放出する。137Csと137mBaの半減期に注目すると、137Csのみが存在する状態から約30分後に、両者は( B 4 永続平衡)となる。
次に、非密封線源137Cs (CsCl水溶液) の取り扱いにおける遮蔽や外部被ばくを考える。実験はフード(ドラフト)の中で行い、線源は直接手で取り扱わずにゴム手袋を着用してピンセットやトングを用いる。作業は、ステンレス、又はプラスチックトレイにポリエチレンろ紙を敷いて、その中で行う。137Csの実効線量率定数を0.078µSv・m2・MBq-1,h-1とすると、バイアルに入った20 MBq の137Cs線源から50 cmの距離で、遮蔽体を置かずに5時間作業する場合の被ばく線量は、( ウ 8 31)µSv となる。作業中は、線源と作業者の間には遮蔽体として鉛の衝立をおく。線源バイアルから作業者の距離と作業時間を変えずに被ばく線量を1/100にするために、線源の入ったバイアルを1cm厚の鉛板で遮蔽するには、鉛の半価層を0.6cmとすると、少なくとも鉛板( エ 4 4)枚が必要である。ただし、ビルドアップの影響は無視する。
実験終了後、137Cs(CsCl水溶液)線源バイアルの表面に汚染のないことをスミア法で確認し、バイアルを鉛製容器に入れて貯蔵室に保管する。フード内、フード近傍の床面の汚染の有無は直接法で確認する。137Cs-137mBaの汚染をガンマ線検出により行う場合に用いるサーベイメータとして、感度の高いものから低いものへ順に並べると( C 3 NaI(Tl)シンチレーション式、GM管式、電離箱式)である。
床面に60Coの汚染が検出された場合には、( D 1 EDTA・2Na水溶液)が除染剤と して使われるが、137Csの汚染が検出された場合にはペーパータオルなどを水又はぬるま湯に浸してふき取ることにより効率的かつ確実に除染ができる。ガラス器具などの洗浄水や廃液の放射能を濃縮しないで直接測定する方法として、それらを( E 7 アクリル)製などのマリネリ容器に入れて測定する方法がある。この方法では測定試料がGe検出器やNaI(Tl)シンチレーション検出器を囲むことで高い検出効率が得られる。また、作業中に誤って137Csを経口摂取した場合には、医師の処方に従って( F 11 プルシアンブルー)を服用して137Csの吸収を防いで排出させやすくする。
2021問4 次のI~Ⅲの文章の□の部分について、解答群の選択肢のうち最も適切な答えを1つだけ選べ。
I 安全についての考え方-危険予知
1つの重大な事故に至るには、数十件の軽微な事故、更には数百件の( A ヒヤリ・ハット)事例が背景にあるという経験則があり、ハインリッヒの法則と呼ばれる。このため、事故を未然に防ぐには、平素から( A 4 ヒヤリ・ハット)事例の発見に努めることが大切であり、施設や設備にかかわる不安全状態や人にかかわる不安全行為をチェックし、業務改善の努力を行うことが必要であるとされている。不安全状態の防止対策としては、 (1)地震では転倒防止、落下防止、通路確保、整理整頓などがあり、(2)火災では、機器、電源ケーブル、配線等の漏電防止対策、薬品の安全管理などがある。不安全行為の防止対策には、教育、訓練、マニュアルの整備などがある。
このため、改正された放射性同位元素等の規制に関する法律を踏まえて、特定許可使用者等が放射線障害予防規程を定める際には、これまでに記載されていなかった( B 5 マネジメント層)の責任を明文化することで、個々人の安全意識の向上のみならず、組織としての放射線安全への取り組み体制を整備することが求められることになった。そして、業務改善の活動の方策として( C 10 PDCA)サイクルを回すことが提唱されており、個々人の安全意識の向上のみならず、組織としての取り組み体制の整備が不可欠となっている。
Ⅱ 化学薬品の安全取扱
管理区域内の火災では、火災に伴う放射性物質の漏えいについての配慮も必要となる。火災防止の観点から、化学薬品を取り扱う際には、化学薬品の性質を理解しておくことが必要である。例えば、引火性の液体には、引火点の低い順に( D 2 ジエチルエーテル < アセトン < キシレン < ニトロベンゼン)が知られており、火気を取り扱う場合には、近くに引火点の低い液体を置かないようにする。また、( E 1 金属ナトリウム)は空気中に放置すると発火したり、水に触れると激しく反応して水素を発生することから、空気や水に触れないようにして保管する必要がある。鉄粉や活性炭の取扱でも発火の恐れに注意が必要である。不揮発性の油をウェスでふき取って保管すると、酸化が進み、発火することがある。単体のリンには幾つかの同素体があり、( F 2 黄)リンが最も発火しやすいことも理解して取り扱うことが望まれる。
Ⅲ 廃液の処理
放射性廃液は中和して保管することが多い。しかし、中和する場合には、発熱や気体の発生にも注意する必要がある。簡単な中和操作を検討する。以下の操作はフード内で行う。
pHが1の塩酸酸性の放射性廃液10 Lがある。この廃液を4mol・L- 1の水酸化ナトリウム水溶液で中和するには、( G 7 250)mLを必要とする。この場合は、加えすぎるとアルカリ性になり、発熱にも気をつける必要がある。添加量に注意しながら、水酸化ナトリウム水溶液を徐々に加える。pH試験紙でpHを確認する。また、炭酸ナトリウム(式量は106とする)を用いてpHが1の塩酸の放射性廃液10Lを中和するには、( H 3 53)gを必要とする。この場合は、激しい発泡が生じないように、炭酸ナトリウム粉末を少しずつ加えながら攪拌し、二酸化炭素が出なくなるまで行う。廃液中に放射性の14Cや3Hを含んでいる場合には注意が必要である。中和の際に、鉄(Ⅲ)イオンを含んでいる場合には、鉄(Ⅲ)の水酸化物沈殿が生じることがある。その際に( I 1 22Na+)は共沈しないが、( J 4 74AsO2 -)は共沈する。
第1種放射線取扱主任者試験5,6
2021問5 次のI~Ⅲの文章の□の部分について、解答群の選択肢のうち最も適切な答えを1つだけ選べ。
I ラジウムは、( A 2アルカリ土類金属 )に属する元素である。ラジウムと同じく( A 2 アルカリ土類金属 )に属する放射性核種には( B 3 90Sr)がある。ICRP Publication137のラジウムの体内動態モデルでは、経口摂取の20%が小腸から血中に移行し、そのうち( C 2 25)%が骨に集積する。223Raは、4回のα壊変と2回のβ–壊変を経て安定同位体である207Pbに至る (図)。最近では、これらの特徴を活かし[223Ra]塩化ラジウム([223Ra]RaCl2) と してがんの骨転移の核医学治療に利用されている。
1MBqの[223Ra]塩化ラジウム水溶液1mL中には、希ガス元素のラドン (219Rn) が含まれるが、この揮散性について考えてみよう。223Raの半減期は、219Rnの半減期よりも著しく長いことから十分な時間が経過した場合、放射平衡を仮定することができる。親核種と親核種の壊変で直接生じる子孫核種の壊変定数をλ1、λ2、物理的半減期をT1、T2、放射平衡時の原子数をそれぞれN1、N2としたとき、( D 7 )の関係が成り立つ。この関係式を用いて、1MBqの223Raの放射平衡時における219Rn の原子数N2は、( E 6 5.71×106)個と計算できる。標準状態(0℃、1atm)における( E 6 5.71×106)個の219Rnの体積は、( F 2 2.12×10-13)mLであるから、0℃におけるラドンの溶解度 (水1mLに対して0.51mL) と比べて著しく小さいため、溶液中に完全に溶解しており、強い振とう等を加えない限り、219Rnはほとんど揮散しないと考えることができる。ここで、ラドンを理想気体と仮定し、標準状態における1モル当たりの体積を22.4L、アボガドロ定数を6.02×1023mo1-1とする。
また、子孫核種である215Poは、通常、酸化物の形で存在する。そのため、[223Ra]塩化ラジウム溶液の取扱いに関して、強い振とう等を加えない限り揮散する割合は少ないと考えられる。
Ⅲ223Ra]塩化ラジウム水溶液を取り扱う場合、α線、β線、γ線が放出されるため、汚染検査にあたっては、目的に応じて効果的な放射線測定器を用いる必要がある。223Ra の壊変の過程でβ線を放出する主な核種は、( G 14 211Pbと207Tl)であり、最大エネルギーが500keVから1MeV以上のβ線を放出する。作業台や床面等が汚染された可能性のある場合は、β線とγ線を検出可能な GM管式サーベイメータ等により、迅速に測定を実施し、汚染が確認された場合は、水、中性洗剤を用いてペーパータオル等で吸い取ることで除染を行う。
Ⅲ ラジウムの放射性同位体には、223Raの他に226Raなどがある。ここでは226Raを対象として、空気中濃度限度と吸入摂取した場合の内部被ばく線量との関係について考えてみよう。必要な数値を表に示す。
表 226Raの内部被ばく線量の計算に用いるパラメータと数値
226Raの空気中濃度限度 g×10-6[Bq・cm-3] 2.2×10-3[mSv・Bq-1] 1.2×106[cm-3・h-1] 40[h]
226Ra を吸入摂取した場合の実効線量係数
呼吸率(1時間に吸入する空気の量)
1週間当たりの作業時間
226Ra の空気中濃度限度と同じ濃度の空気を、放射線業務従事者が作業室において 1 週間の作業時間の間継続して吸入し、空気に含まれる226Raをすべて摂取した際の内部被ばく線量は、約( H 10 1×100)mSvとなる。1年(50週)継続した場合は、約( I 15 5×101)mSvとなる。なお、226Raの実効線量係数には、体内で生成する( J 8 222Rn,218Po,214Pb,214Bi)など子孫核種による被ばくも考慮されている。
2021問6 次のⅢの文章の□の部分について、解答群の選択肢のうち最も適切な答えを1つだけ選べ。
I 国際放射線防護委員会ICRPの2007年勧告では、放射線防護体系における3原則について勧告している。そのうち、ある線源からの個人の被ばくに着目したアプローチ(線源関連)であり、すべての被ばく状況に適用される原則として、( A 2 正当化)と( B 4 最適化)の原則がある。
( A 2 正当化)の原則は、新しい線源の導入、現存被ばくの低減、潜在被ばくのリスクの低減など、放射線被ばくの状況を変化させる行為において、それがもたらす損害を相殺するのに十分な個人的あるいは社会的便益を達成すべきであるという原則である。
防護の( B 4 最適化)の原則は、被ばくする可能性、被ばくする人数、およびその個人線量の大きさは、すべて、経済的及び社会的な要因を考慮して、合理的に達成できる限り低く保たれるべきであるとするものである。放射線作業者における個人線量と被ばくする人数の双方を低減する目標を達成するための重要なツールとして、集団が受けた線量の積算として定義された( C 8 集団実効線量)がある。ただし、この指標を用いて( B 4 最適化)の目的で防護の選択肢を比較する際には、不公平を低減するために、個人の被ばく分布の特徴にも注意を払うべきである。( C 8 集団実効線量)は、ときとして、特定の被ばくが想定される集団の将来リスクの予想に用いられることがあるが、これは誤用である。特に、大きな人口、広い地域、長い期間の小さいレベルの被ばくに対しての適用は適切ではない。
すべての線源から個人が受ける被ばくに着目したアプローチ(個人関連)であり、計画被ばく状況に適用される原則として、( D 3 線量限度)の適用の原則がある。患者の医療被ばくを除く計画被ばく状況においては、規制された線源からのいかなる個人への総線量も、( D 3 線量限度)を超えるべきではないとするものである。
なお、線量の制限値としては、ほかに( E 4 線量拘束値)と( F 6 参考レベル)がある。これらは( G 1 線源関連)の制限値であり、また原則という位置づけの( D 3 線量限度)とは異なり、( B 4 最適化)のツールと位置付けられる。( E 4 線量拘束値)は、患者の医療被ばくを除く計画被ばく状況におけるある線源からの被ばくに対して用いられる制限値であり、その線源に対する( B 4 最適化)の予測線量の( H 4 上限値)である。( F 6 参考レベル)は、緊急時及び現存被ばく状況における線量またはリスクのレベルと定義されている。
Ⅱ 放射線防護体系の目的は、放射線被ばくの有害な影響から人の健康と環境を適切なレベルで防護することである。人の健康に対しては、有害な組織反応(確定的影響) を防止し、確率的影響のリスクを合理的に達成できる程度に減少させることとしている。
確率的影響の評価はしきい値なし線形モデルに基づいており、それにより外部被ばく・内部被ばく、全身被ばく・部分被ばくに起因する線量の加算が可能となっている。ここで、特定の複数の組織 ・ 臓器に対して限定的に吸収線量が与えられた場合を仮定して、等価線量及び実効線量を計算してみよう。肝臓の平均吸収線量としてα線で1mGy、γ線で5mGy、胃の平均吸収線量としてγ線で50 mGyの被ばくがあったとする。なお、それ以外の組織・臓器の被ばくは無視できるものとする。このとき、肝臓の等価線量は( I 7 25)mSv、実効線量は( J 5 7)mSvである。ただし、放射線加重係数及び組織加重係数はICRP2007年勧告の値を用いるものとする。なお、肝臓及び胃の組織加重係数は、それぞれ0.04、0.12である。